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the MOST レコーディング レポート 2001.1.30~31

事のはじまり ゲスト出演〜the MOSTの誕生〜

 小川がDJを担当しているfmとやまの人気番組!「フォーユー未来倶楽部」のゲストとして、ジャズドラマー大坂昌彦さんに御出演願ったのは、暑い盛りの 2000年7月31日のことでした。

 この番組は90分の生放送ですが、インターネットでも放送しており、ゲストに生演奏を強いる、、という強引さが売り物。そこで、ドラム+ベース、さらにリード楽器も、、と一緒に生演奏してくれたのが ベーシスト塩田のりひでさんと、アルトサックス奏者の多田誠司さん。3帖あまりの せま〜いアナブーススタジオに無理矢理ドラムセットとウッドベース、アルトサックスを持ち込み、演奏者3人+DJ小川で押し合いへし合いの90分。暑い熱い喋りと演奏が 繰り広げられたのです。

 今回くしくも初顔合わせの3人、縁は異なもの味なもの、、で このピアノレスのトリオ演奏が あまりにツボに はまって素晴らしかったので、早速、都内でライブ活動を開始することになりました。番組内で名称を公募しとところ数々寄せられたアイディアから「the MOST」と決定。(もこのM、大坂のO、塩田のS、多田のTで MOST、それにthe をつけて、最強の、最高の、、の意味!いいですねぇ〜♪夢・ジャズ倶楽部のはのすけ部長、It's so funny部員が命名)11月に吉祥寺のSOMETIMEでおこなわれたお披露目ライブには、お客様が詰めかけ満員大盛況、新ユニット順風満帆の船出となりました。

 ちょうどその頃。時を同じくして、サックスの多田誠司さんが ソロアルバムを出すことになったのです。

彼は自分がリーダーのバンドをいくつも持ち、サイド参加も含めると もう日本のジャズ界を八面六腑に牛耳る大活躍を続けているミュージッシャン。どれを切り取っても多田誠司そのものなのですが、今までと違ったアプローチをしたいと思ってもいたのでしょう。「この「the MOST」を基軸としたアルバムにしたい」と彼の口から告げられた小川は おっとびっくり さぁ大変。そりゃ、番組で月下氷人役を務めた責任者として見届けなければ、、と よせばいいのに でしゃばって、1月30日31日の両日、彼らのレコーディングに立ち会うことと あいなりました。普段逆立ちしてもしない手料理やシャンパンの差し入れなど持参で 馳せ参じたのは東京銀座のオンキョーハウス5Fのレコーディングスタジオ。

以下、裏バンマスとして( the MOST のMは もこ の頭文字だが、いつでも 「るで○○な、た目勝負の、っつり、っちゃHで、っこり元気を届ける」、、などの意味に転移の可能性あり、、、ハハ)見ていた一部をここに 報告する次第。

レコーディング風景



 
レコーディングは せぇの!っで一斉に演奏する一発録り。
ただし、あとでバランスを調整するために 一人一人 個室に入っての演奏です。
お互いのアイコンタクトは なんとテレビカメラを置いて、モニターを通しておこなうのです。
孤独で なおかつ究極の阿吽の呼吸を必要とする、ライブとは明らかに異なる世界。ただただ 感嘆。


一番広いスタジオにいたのが ドラマー大坂昌彦。マイクセッティングに時間をかけ、
本人も納得のドラムの音をミキサーヒロカネさんが作ってくださったようです。
いやいや、誰の目にも留まらぬドラミングは さながら千手観音のよう。
正確無比、大胆にして細心、激しく優しく、常人には刻めない複雑な
変拍子をものともせず、ただただゴッドハンズ&フィート@ねつ造は無いぞ!の壮絶さ。
ライブで敬服していた彼のテクニックですが、決して誤魔化しの利かない
レコーディングスタジオにおいてこそ、その圧倒的優位性が際だったと思われます。
よぉっ!日本一〜!!あんたは 天才!


ベースの塩田は すごく真摯に レコーディングに臨んでました。
the MOSTは別名「難曲探検隊」と呼ばれるほど、難しい曲ばかりだし、
3人の誰が一瞬の気を抜いても玉砕してしまうほど 緊迫の世界。
それに 年上の ジャズ界を代表する2人を相手にしてのことだもの、
シオちゃんの緊張、察するに余りあります。

トリオ演奏のみで録音の初日は 愛器のベースが 修理から戻ってきたばかりで、
その鳴りにも非常にナーバスになっていた彼。ソロの出来にも いちいち一人落ち込んで
 終わったときには ちょっと凹んでいた姿が 真剣さを物語っていました。
多田、大坂は「いぇぃ〜〜〜!最高じゃ〜〜ん!!」と盛り上がっていた
その横での彼の寡黙さが また初々しかったのです。

初日を終えて、疲れも手伝ってか 黙りこくるシオちゃん。
すっごい良かったよ。明日もがんばれ。


とりあえず初日、ピアノレスの5曲を終えて、まずはおつかれさん!で乾杯の図
(後列)レコーディングエンジニアさん、ミキサー広兼さん、塩田、レコード会社EWE高見さん
(前列)大坂、多田、小川


それぞれの曲について(2/7追加!)
門外漢の私が いろいろ申すのも差し障りがあるかな、、と、前回のアップではカットしていたのですが、リーダー多田氏より、是非もこさんの視点で書いてください、、とおっしゃっていただき、また、ご本人も より詳細な解説をご自身のホームページに掲載
(こちら!)されているので、ここに素人目から見た あれやこれや追加しておきます。

録音順に。。。

〜初日〜

1曲目:多田作曲 塩田のりちゃんの苦悩をリスペクトしてつけられたタイトルの曲「Nori's Direnma」
今回のレコーディングで、「若きウェルテル、、ならぬシオちゃんの悩み」具合を見せられたので、このタイトル、アートペッパーの「ダイアンのジレンマ」以上に、伝わってくるモヤモヤがあるのでは?
この曲は 小川が到着前に録り終えており、最後のテイクを皆でモニターしていたところでした。
「調子はどう?」と聞くまでもなく、3人の笑顔がレコーディングの快調さを物語ってます。イイ感じなのかも?!なんか嬉しい気分で副調後部のソファに腰掛ける私であった。

2曲目:多田作曲 タイトルチューン「much,more,the MOST」
バンド名が織り込まれていることからもわかるように、このアルバムの要になるだろう曲。テンポも速く、各人のソロが際だつ曲。何度かのテイクを重ねたものの、その度事に ソロの部分が大きく違うのは まさにインプロビゼーション・プレイ、皆、譜面の上でのみ飛び回っているのではないのねぇ、、と あらためて3人のジャズメンとしての能力に感嘆することしきり。このテイクにしよう、、と多田、大坂が押したバージョンを、ベースの塩田は自分のソロ部分に不満があったらしく、何度もやり直す。この時点でちょっと煮詰まりそうな予感が。塩田、これで行こう、、と最終的に決まった瞬間に シオちゃん'sジレンマを見たり。(これは すべてのレコーディングを終えてからの多田&石井の言葉だったのだけれど、「塩田、一番イイところを残そうと思うな。うまくいったのも、ダメだったのも、すべてそれが今の自分の”記録”なのだから。今を残すことなのだから。」二人のこの言葉は語録に残しておきたい けだし名言であるな、、、。)Take it easy!

3曲目:オーネット・コールマンの
「the SPHINX」
ちゃっちゃらちゃっちゃらちゃ・・・と速いフレーズのテーマが印象的な曲。the MOSTの明るさを体現しているようでした。スリリングな前半と、がらっと曲調が変わる中盤も面白い。後奏部分では エジプト、ピラミッドの前を ゆっくりラクダが横切っていく図が浮かびます。
なんて想いながら、小川は自分の録音番組収録のため、ここでいったん退場。。。

4曲目:多田作曲 5拍子と4拍子の交錯する超難曲
「Some of the things I have」
この曲ねぇ、、、なんだか不思議な気分になるのよ。それが生理的に不可思議な変拍子のせい、、とわかるのは プロの説明が入ってから。2日目の大坂ちゃんのボーヤが「この曲、酔っぱらいそうになりますよね」と言ったのが 鋭い表現。船酔いしそうなんである。すごく複雑なリズムの取り方をしているらしい。それを違和感なくやってのける、大坂さんは やはり偉大であるのだ〜。ドラムの教則本の最上級者用に取り上げて、微に入り細に入り。解説してほしいもんである。

5曲目:大坂昌彦作曲 これぞ男の心意気!壮絶な
「討ち入り」
陣太鼓を打ち鳴らしながら、吉良邸に討ち入りする赤穂47士の姿が浮かんでくるのですよ。ものすごく速くて、スリリングで、エキサイティングな曲です。これ、アルバムの何番目に入るんだろう、、、どこに来てもすごい存在感だろうなぁ。

〜第2日〜

いよいよ、真打ち登場。今回のゲスト・ミュージッシャン、石井彰氏の加入によって、 前日とは がらり変わった魅力のthe i-MOSTが展開されていきます。

1曲目:大坂昌彦作曲 
「Critical message」
臨界点に達した危ないメッセージ、、という意味。どんな言葉なんだろう、、、恋人同士のそんな危うい会話を思い浮かべつつ、ファンキーなリズムに体が自然に揺れてきます。タイトルとうらはらに 非常に気持ちよく聞ける小粋なナンバー。案外、、、危険な一言ってのは こんな気持ちよさの裏に潜んでいるのかもね。

2曲目:石井彰作曲 美しいバラード「Sometine in the snow」
これは♪美しすぎて〜君がこ〜わい〜♪と感じる ほんとに耽美な曲です。多田さんのソプラノ・サックスが 一瞬、ケニー・Gの作り出す世界のように響いてくるのだけれど。私思うに、多田さんの音のほうが ぐっと立体的なんだよね。しんしんと降り積む雪の中に、徐々に浮き上がってくる愛の形、、、とでも言いましょうか。激しさ、男臭さ、かっこよさが売り物のthe MOSTの中にあって、最も対極の、ある意味ど真ん中の精神世界を表現しているナンバーだと思えました。

3曲目:多田の1stアルバムにも収録の名曲をファンクアレンジで「トレビの泉」
この曲を初めて聴いたのは、多田さんの1stアルバム「GIG」の中。前回とはガラリとアレンジが変わり、前半、リードのサックスが入って来る前のリズムセクションの3人の演奏が 実にファンキーで気持ちイイ!the MOSTの演奏を聴くと感じる、明るさ、元気、やる気、前向きなキモチが増幅されていくような 爽やかな気分になります。それにのって、多田さんも 実に気持ちよさそうにブロウしているんだなぁ。。。
「そっかぁ、、多田さんの観たトレビの泉は こんなイメージだったんだぁ。私が行ったときは2度とも水が入ってなくて、あんまり良いイメージないんだよね、、、」と前のトレビの泉を聴いたときに言ったら、「実は 行ったことないんです、ローマ。だからこの曲も想像。。」と彼の言葉。おぉ、想像は実物を凌駕するものよのぉ。
テーマ、サビの部分、「トレビ、トレビ、トレビ〜♪」とトレビアンな歌詞が当てはまるので、ライブで演奏のときは みんなで口ずさみましょう♪

4曲目:映画「ベティーブルー」のテーマ
これは 後に述べているとおりです。
この曲、小川の葬式に流してほしい。この曲に抱かれて死んで行けたら、それはそれで幸せだった、、と言えそう。




2日目参加のイシイちゃんのブース(外のモニターに映っている多田氏の勇姿にもご注目)
後からおっかけ参加の石井彰さんですが、前日のピアノレス、ごりごり男気あふるるthe MOSTが
彼のピアノの音色が入った途端、全く違った光を放ち始めます。
なぜに、なぜに、あなたのピアノタッチは そんなに優しく哀しく切なくも美しいの?
聴いてるだけで 身も心もとろけます、うっとり しっとり。
彼が作曲した耽美なバラード(仮題「Sometime in the snow」)は さながら
天上から ゆっくりと降り積む 雪のように 静かに心を 白く染めていってくれました。

 
リーダー多田と 裏バンマス気分の小川          大坂ちゃんとシオちゃん


ピアノの石井さんが入る場合は ユニット名は the i-mostとなるようです。
携帯の i モードみたいだね。いっそ、I'm the most !(俺は最高!)にしたら?


ミキサー卓の後ろからスタジオ内を眺めるの図。ここから見えるのは大坂ちゃんのドラムのみ。
向かって右側に3つの個室ブースがあり、そこにそれぞれ、多田、石井、塩田が楽器とともにこもってます。


2日目いよいよラストの曲の録音です。 残るは 多田と石井のデュオ演奏。
それまで個室で弾いていたグランドピアノを、ドラムセットを片づけた広いスタジオに出し、
モニターを通してではなく、お互い視界に相手の姿を入れてのアイコンタクトを
取れるようにしてくれた ミキサーのヒロカネさんの心遣い。
入魂の演奏をするから、決してやり直しをしない、たった1回だけで終わらすぞ、、と
ゆっくりスタジオに入っていった多田誠司。
なんだか後光が差して見え、、、。あ、光っていたのは おでこか。

曲は 多田さんが 好きで好きでいつかレコーディングしたいと思っていたという
映画「ベティーブルー」のテーマ。当日朝も ずっとビデオを観てから来たそうです。

ピアノのリフレインに シンプルなテーマ、
そして心の葛藤を表すような激しいブロウのアドリブソロ。
なんというか。。。静かな感動が あとからあとから津波のように押し寄せて、
副調で聞いていた裏バンマス小川、不覚にも 泣いてしまいました。
男と女の狂おしいほどの愛を描いたフランス映画「ベティーブルー」
そのワンシーンワンシーンが フラッシュバックしてくるの。
まだご覧になっていないかた、レンタルビデオかDVD等で 是非、
映画「ベティーブルー・インテグラル(ノーカット版)」を
鑑賞してから聴くと、より一層、心のひだに沁みてくると思うよ。

多田さん本人にとっても会心の出来だったみたい。
で、
「おぉ〜〜〜、ベティー〜〜(映画の女主人公の名前)♪」と叫びながら
石井ちゃんに抱きついていく その姿を見て、
「なぁ、塩田〜、ジャズミュージッシャンは あぁいうふうに
明るくなきゃいけないんだよ、わかるかぁ?」
と大坂ちゃんが塩田に とくとくと説いていたのが いと おかしかった♪


ともあれ、最後は シャンパンで乾杯〜〜♪
素晴らしいレコーディングを終えて、ほっと一息。
このあと、美味しい築地のお寿司やさんへと
打ち上げに向かったメンバーであった。

まだミックスダウンの作業が残ってますが、ここまで来れば もう完成したも同然ね。

アルバムのリリースは2001年5月21日の予定。
最高の内容を どうぞお楽しみに!

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